集団体操トレーナーの役割り

 デイサービスの集団体操の目的は、運動効果だけではなく、孤立感解消や自立への意欲向上もあります。

 集団体操は、意欲を持って取り組むよう声掛けから始まります。やらされている・・というネガティブな気持ちがあると、いくら体を動かしても健康効果が半減されます。

 トレーナーはエンターテイナー。元気な笑顔でご利用者の気分を盛り上げましょう。

2016年6月19日(日)、7月3日(日)、9月18日(日)の3日間講座「集団体操トレーナー養成講座」を行います。
9月18日はブラッシュアップと評価です。期間中に3回まで現場見学をすることができます。

お風呂無、お昼はお弁当、施設は半地下と、マイナス要因三拍子揃ったデイを、予約待ちの人気デイにしたLee先生が直接指導のトレーナー養成講座です。

詳しくは、シャッキリカレッジのホームページをご覧ください。

【第1回】デイサービスにおける集団体操とは

(2014.10.10配信)

 こんにちは。Lee セツコです。今回から選ばれるデイサービスの必須要素「集団体操」を、楽しく安全に行うためのトレーナーの役割りについて、連載でご説明していきます。

 私が提案するシャッキリ体操は、介護予防と機能維持に効果的で、高齢者が安全で行えるようにプログラムを組んでいます。

 筋力が低下し、バランス感覚が衰えた高齢者には、若い人と同じ運動は好ましくありません。ペースを変えたり、可動範囲を狭めたりするなどして、なんとかできたとしても、実際には身体に無理を強いている場合があります。

 正しい知識に基づいたプログラムを実施するようにしましょう。

 ここでは、運動そのものではなく、集団体操を行うためのトレーナーの心得についてお話します。

 高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるためには、自立した生活ができるよう運動機能の維持が必要です。そのためには、効果的な運動を予防の段階から行うことが大切です。
 さらに、ただ体を動かすだけではなく「心身機能・活動・参加」の各要素にバランスよく働きかけてQOLの向上を目指すことが求められています。

ポイントデイサービスの役割り

 介護保険法の第7章に明記されているように、デイサービスの大切な役割は、

  • 日常生活の世話
  • 孤立感の解消
  • 心身の機能維持
  • レスパイトケア

です。

ポイントデイサービスにおける集団体操の役割り

デイサービスにおける集団体操は、

  • 適切な運動効果で自立支援に役立つ
  • 楽しく体を動かすことで生きる意欲が高まる
  • 仲間と一緒に運動することで孤立感を解消する

など、生きる意欲や喜びにつながり、地域で暮らすための生活力を向上させる働きがあります。

ポイント集団体操におけるトレーナーの役割り

  • トレーナーはエンターテイナーたれ
  • 元気で溌剌とした姿で、見本たれ

 エプロン姿のまま運動指導は、ありえません。普段は介護職員として身の回りを世話をしていても、体操の時間はトレーナー然とした服装、身なりも大切です。できれば、指導時は小ざっぱりしたスポーツウェアに着替え、女性ならば、顔色を良くするナチュラルメイクをすることをお勧めします。

 《からだもシャッキリ、こころもシャッキリ》のシャッキリ体操は、トレーナーがエンターテイナーとして雰囲気づくりをするところから始めています。

 トレーナーの笑顔が、参加者の笑顔を引き出します。

からだもシャッキリ!こころもシャッキリ! 

 シャッキリ体操とは、健康運動指導士 Lee セツコ が提唱する誰でも簡単にできる健康運動プログラムです。高齢者介護施設や各地の市民講習会などで楽しく行える集団体操として取り入れられています。

 気功を取り入れたストレッチ・脳トレ体操・有酸素運動・筋力運動などを組み合わせたプログラムです。

  • 運動の大切さを実感できる、体に呼びかける体操です。
  • ひとつひとつの動きが、体のどの部分に働きかけているかを理解します。
  • 状態に合わせて、難易度・スピード・加重を調整します。
  • 道具を使ったり、音楽に合わせたり、飽きない工夫をします。
  • グループで行うと、ゲーム感覚で楽しく運動できます。
  • 簡単な動きの組み合わせなので、ご自宅で一人でもできます。

 詳しくは、シャッキリカレッジのホームページをご覧ください。

【第2回】ファンを増やす!集団体操の魅力

(2014.11.10配信)

 今回は、事業所のファンを増やす、集団体操の魅力についてお話します。

 「はーい、ゆっくり動かしましょう!いち、に、いち、に」

 トレーナーの元気な声が響き、利用者さんが一生懸命体操をする光景。デイサービスなどではよく見られます。

 マシントレーニングは、運動効果は高いですが、みんなで一緒にやる体操というのは、運動効果だけではなく、様々な効果があります。

ポイント集団体操に期待される効果

  • 時間を決めて行うので、一日の流れにメリハリがでる。
  • みんなで一緒にやることで、孤立感が解消される。
  • お互いの状況を見ることで、自分自身を知ることになる。
  • 競争心や励ましあいなど、利用者同士の和が生まれる。
  • トレーナーはじめ職員は、利用者の状態を観察する機会になる。
  • 体を動かすだけではなく、声を出す、音に合わせるなど、五感の刺激になる。
  • 利用者共通の話題になり、体操の時間以外にも会話が生まれやすい。

ポイント参加意欲を高めることから始まる

 トレーナーの声掛けで意欲が高まり、運動効果が倍増します。トレーナー自身も運動の時間を楽しみにして、心からの明るい笑顔で指導ができるようになることが望ましいです。

 トレーナーは、自らがエンターテイナーであると自覚しましょう。エンターテイナーは周りを「乗せて」舞台に引き上げる役割があります。

 集団体操の時間をショータイムとして考えれば、その時間中と前後をいかに楽しく盛り上げるかがイメージできると思います。大切なのは、笑顔。目をしっかりと見つめて、笑顔でエネルギーを送りましょう。

ポイント開始前から集団体操実施を告知

 やる気がないのに参加させられた・・という気持ちがあると、運動効果は半減です。

 集団体操の時間に、いきなりやりましょうと言われても戸惑うばかりで、反発を感じさせてしまうこともあります。

 集団体操を始める少なくとも30分くらい前から、体操を行うことをお伝えしましょう。告知は1回ではなく、何回しても良いのです。

 朝の送迎中または到着時に、一日の流れを説明し、その中で「今日は何時から集団体操です」と説明するのも良いでしょう。

 その他、何かのおりにつけて集団体操を行うことを伝え、心の準備をするよう計らいます。

ポイント短い時間でも集団体操導入を

 シャッキリ体操では、約1時間の基本プログラムを実施していますが、マシントレーニングに重点を置く場合などは、時間を短くしても良いのです。

 たった10分でも良いので、集団体操のメニューを取り入れることをお勧めいたします。

 次回から、具体的なトレーナーレッスンを行います。デイサービスにおける集団体操の大切さについて、しっかりと意識するよう、心に留めておいてください。

【第3回】集団体操《セッティング編》

(2014.12.10配信)

【集団体操~セッティング編】
 体操を始める前の、セッティングについてポイントをご説明します。

★チェアエクササイズ
 高齢者は立位を保持することが難しいため、デイサービスの集団体操はチェアエクササイズが基本になります。もちろん、個別の状態に合わせて立位、座位なども調整します。

 チェアエクササイズの場合、あらかじめセッティングする必要がありますので、スペースの作り方についてアドバイスいたします。

○椅子の選び方
 4つ脚の、安定した椅子を利用しましょう。折り畳み椅子や、転がりやすいスツールは使用しないでください。
 肘掛は運動の邪魔になりそうですが、むしろあったほうが安全です。
 また、車椅子のままではなく、必ず移乗しましょう。車椅子は、運動に適していません。
足がフロアーに着地する必要もありますので、可能な限り椅子に座るようにしてください。

○椅子の並べ方
 トレーナーと向き合うように横一列に並べます。
 トレーナーの視界に入る、一列4~8脚までが目安です。
 トレーナーを中心に円弧を描くように配置したくなるかもしれませんが、まっすぐで構いません。高齢者用の体操に、トレーナーの動きを見ないと分からないような難しい動きはありません。それよりも、まっすぐ前を向いて正しい姿勢を維持することに意識を集中させるようにします。

○人数が多い場合は、二列目も用意します。
 一列目の椅子と椅子の間に、二列目の椅子を置くように配置すると、運動中の様子が見やすくなります。椅子と椅子の横方向の間隔は、60cm以上。

○高さの調整等
 その人の身長に合った高さの椅子を用意できれば良いですが、それができない場合は、足元に踏み台を置いて調整します。
 座ったときに、足がしっかりと床につくのが望ましいです。足が浮いてブラブラの状態では不安定ですし、力が入りません。

 踏み台は、しっかりと安定したものが良いです。牛乳パックなどを再利用して高さの違うものをいくつか用意しておきましょう。

★スローとアップのBGM
 音楽に合わせて体操すると、楽しくリズムカル行うことができます。高齢者になじみのある曲が良いですが、案外洋楽ロックなども若返り効果があり楽しめます。
 ヒーリングミュージックなどのスローテンポのものと、軽快に歩く速さのアップテンポのものを用意すると便利です。

○癒し効果のあるヒーリングミュージック
 スローテンポの曲は、ストレッチや気功を取り入れた体操の時に使用します。水のせせらぎの音や、小鳥の声を集めたヒーリングミュージックも良いですし、優しいピアノの音色も心を穏やかにします。歌詞のある歌が入っていないほうが好き嫌いが無く、リラックス効果が高まります。

○軽快なテンポのマーチやダンスミュージック
 年配の人にはソウルミュージックとも言える「365歩のマーチ」などは、若いころを思い出し元気になれる曲の代表格です。メロディーラインがきれいな曲であれば、若い人が聴くロックミュージックも刺激があって好まれます。
 アンダンテくらいの、少し早めに歩くくらいのテンポの曲は、リズム体操や有酸素運動の時に利用できます。

【第4回】集団体操《準備編》

(2015.1.10配信)

【集団体操~準備編】
今回は、体操を始める前の、参加者側の 準備 についてです。

★ 体操に参加する意識
 スタッフは、少なくとも30分前には参加者に体操開始を知らせます。その時間になっていきなりやりますと言っても、気持ちが切り替わらないこともあります。
 体操の時間が待ち遠しくなるような雰囲気を作り、ポジティブなイメージを高めます。

 体操がやりたくないという人は、無理に誘わず、
「では、今日は見ているだけにしましょう」と意向を認めることも必要です。
 その代り、次回は参加できるように、しっかり見学しましょうと声をかけ、体操の様子が見える場所に見学用に椅子をセッティングします。

 もちろん、それも固辞するようなら、無理強いはしません。
スタッフに人員に余裕があれば、少し離れたところで、マンツーマンで指導することも一案です。特に新しい利用者さんの場合は、最初の1回は、少し離れたところでマンツーマン指導をすると、2回目からは参加しやすくなります。

★ 目的の確認
体操の目的を再確認します。機能を回復して歩けるようになったら、公園に散歩に行きましょうとか、前向きになれるような声掛けをします。
個別のサービス利用計画に基づいた目標も本人と一緒に確認し、明確な目的を確認することも大切です。

★ 動きやすい服装
 伸縮性のある服であれば、特に運動着でなくても構いません。ボタンが外れていたり、紐がだらんとしていたりすると、ひっかかったりして危ないので、きちんと留めるなり結ぶなりしておきましょう。ただし、首元は締め付けないように注意しましょう。
 靴は、しっかりと履きこめるものが望ましいです。スリッパや滑る素材のものは、避けるようにします。

★ 健康状態確認

  • 脈  拍   80/1分以上は、要注意。正常値は60~70
  • 顔  色  表情や目の動きに異変が現れます
  • 手足のふるえ 普段と違う時はすぐに安静にします
  • 姿  勢  同じ姿勢を保てないのは体調不良を疑います

 通常のバイタルチェック(血圧・体温)のほか、心拍数について開始前と終了後に計測すると良いでしょう。また、数字だけではなく、顔の表情、手足の震え、姿勢の保持、食欲や会話の様子などから、状態をしっかり確認しましょう。
 本人が体操に参加したいと希望しても、様子を見て見学にとどめることも必要です。見学の場合は、近くに座って同じ時間を共有するだけでも十分です。
 部屋の隅っこで孤独感を味わわせないように配慮しましょう。

★ 水分補給
 季節によって量は調整しますが、冬場でも体操前には必ず水分補給をします。薄めのスポーツドリンク、または白湯でも良いです。糖分を含んだものや炭酸飲料、乳製品は避けます。

★ 着席準備
 着席して、開始を待ちます。利用者同士の人間関係なども考慮して配席します。目の不自由な人、耳の聞こえの悪い人は、できるだけトレーナーの近くに配席します。
ふらつきのある人は、サブのスタッフが対応できる場合は、サブスタッフが付き添える位置に配席します。
 着席したら、足元の高さを調整します。踏み台などを用意して、安定した座位を保てるようにしましょう。椅子は浅く腰掛けず、やや深めに腰掛けます。背もたれにはできるだけ寄りかからないようにします。

 意欲を高め、楽しい時間になるよう、スタッフの事前準備は大切です。

【第5回】やる気を高める声掛けのポイント

(2015.2.10配信)

 いよいよ体操の時間になった時に、トレーナーは場の雰囲気を盛り上げて、参加者を「その気」にさせることから始めます。

 デイサービスにおける集団体操は、言われた事をただやる、手足だけを動かせばよい、ということではないのです。

 集団体操の時間は、トレーナーにとってショータイムです。スタッフ、参加者全員で、楽しい時間を共有できるように、盛り上げていきましょう。

 トレーナーの腕の見せ所です。まずは、明るい笑顔で体操の開始を宣言しましょう。

★ 体操開始を宣言する
○参加者の注意を引き付ける
○体操が始まることをしっかり意識する
○みんなで一緒に時間を共有することを体感する
○体操の目的について前向きにとらえる

 トレーナーの声掛け次第で、意欲は高まりもするし、逆に反発も招きます。上から目線で強制参加させるのではなく、自発的に参加したくなるような誘導が必要です。

 なかには、嫌々参加するという態度の人もいるかもしれませんが、無理をせずに少しずつなじんでいただくようにしましょう。

★ 体操の目的を説明する
○自立した生活を送るための、身体機能の維持・回復
○みんなで楽しい時間を共有する
○音楽を聴き、相手の動きに合わせるなど、五感を刺激する
○少しキツイくらいのことがトレーニングになる
○自律神経を整え、免疫機能を高める
○ストレス解消など、精神的効果

★ ポージングなどで若々しい気分に
○体操が一区切りついたところでは、決めポーズ
○流行の音楽で華やいだ気分になる
○運動中は、元気に声を出して掛け声をかける

 「その気になる」というのは楽しいものです。気恥ずかしさもあるかもしれませんが、決めポーズなども取り入れて、その気にさせることも大事です。

 BGMに流行の音楽を取り入れることも一案です。若い人に負けないパッションがある
んだということは、自信につながります。
 運動中は、元気な声で掛け声をかけるのも効果的です。脳の体操になりますし、帰属意識が高まります。声を出すことは腹筋を鍛える効果もあります。黙々と運動するよりも、継続的な効果が期待できますので、ぜひ掛け声(合いの手、カウント)をリードしてください。

★ 褒める・適切なアドバイス
○褒めることは一番のやる気アップ
○具体的な個別アドバイスは、見てくれているという安心感
○ポジティブな言葉は、ポジティブな精神につながる
○~はダメ、ではなくて、~するとより良い、という表現に

 トレーナーは、体操の時間中はほぼ喋りっぱなしになります。運動の仕方などは、若い人は毎日やっていれば、覚えてしまって必要ないと思いがちですが、高齢者は何度言っても忘れてしまうので、くどいと思われることはありません。毎回、毎回、初めてのレッスンのように、丁寧に指導しましょう。

【第6回】集団体操は「観察」のチャンス

(2015.3.10配信)

 今回のキーワードは「観察」です。
 ただ漫然と体操を実施するのではなく、参加者の心身の状態を知る機会ととらえ、しっかりと観察することが大切です。

 集団体操は、利用者の状態を見比べることができるチャンスです。
 これは、スタッフ側から見ての観察もありますが、本人が自覚する観察でもあります。

 他の人に比べて、自分の運動機能がどの程度のものなのかを把握することで、目標も明確になり、やる気もアップします。逆に落ち込む場合もあるかもしれませんが、それはスタッフが上手に声掛けをして、「上達具合」を数字などで示せれば前向きに転換することが可能です。

★ 観察のポイント

 ○体調 顔色、手足のふるえ、姿勢の保持
 ○意欲 声の大きさ、動きのメリハリ
 ○機能 可動範囲、反応速度、柔軟性、持久力
 ○認知機能 左右の間違い、各部位の間違い

★ 認知機能低下の発見

 体操をしながら、身体機能の状態をチェックできます。また、指体操などをやると、認知機能の衰えを発見する場合があります。指の名称(人差し指や中指)が混乱したり、右と左を間違ったり、ゆっくりやっても混乱している様子が見受けられる場合は、認知機能の低下が疑われます。

★ 個性の把握

 また、集団体操やグループゲームなどでは、性質(個性)が分かります。積極的な人、内向的な人、努力家タイプ、投げやりになる人など、普段では見られないその人の特性を把握できます。
 それは、スタッフだけではなく、利用者同士がお互いを知るチャンスでもありますので、より親しく身近に感じることになります。
 孤立感解消ということで、目的の一つが達せられます。

★ 成果の記録

 集団体操を定期的に行うと、状態の変化を記録して変化を計ることができます。

 運動プログラムに合わせて、記録シートを用意すると良いでしょう。

 運動プログラムそのものの記録ではなく、運動プログラムをやったことにより、そのあと何か簡単な運動テストを行って、判断材料にすることも一案です。

 特に男性利用者は、数字で成果を把握すると納得するタイプの人が多いです。

 難しいテストでなくてもOKです。たとえば、10mを何秒で歩いたか、などの記録でも変化を知ることができます。

【第7回】高齢者に適した運動プログラム

(2015.4.10配信)

 今回は、いよいよ運動プログラムの中身についてお話します。ここでは、高齢者のための運動ということで特に注意したいことをご説明します。

★ 高齢者特有の状態に配慮する

 ご当地体操や、専門家が考案する健康生き生き体操などは、数多くあります。オリジナルの体操を実施している事業所もあるでしょう。

 ここで気を付けたいのは、高齢者に適した運動かどうかです。高齢者は、筋力の衰えや、バランス感覚の低下など、若い人とは異なる身体状況になっています。
 また、麻痺があったり、目や耳の機能低下によるバランス感覚低下など、個別の状態も考慮しなくてはなりません。

 老化は自然現象です。抗って無理をしても身体を痛める場合もあります。また、介護保険制度のもとにおいて、介護サービス事業者に求められているのは、自立生活支援です。

 すなわち、生活に必要な動作が行えるような、身体機能の維持・回復です。筋肉ムキムキにすることや、痩せて美しいプロポーションを作ることが求められているわけではありません。この点は、一般のスポーツジムとは異なりますので、トレーナーも体操の目的を
今一度しっかりと認識することが大切です。

★ 生活動作のための身体機能の維持・回復

 「高齢者に適した、自立した生活を送るために必要な身体機能の訓練」ということを考えると、ご当地体操やオリジナル体操が必ずしも適しているとは限りません。しっかりと見極めて、プログラムを選定してください。

 シャッキリ体操は、厚労省認定の健康運動指導士や、気功や運動生理学の基礎を学んだうえで、各種講習会等でたくさんの人を指導してきた経験で得た内容をプラスして、プログラムを組んでいます。

★ 基本的なプログラムの流れ

 介護事業所で実施する1時間程度のメニューとしては、次のような流れをお勧めしています。

1.ストレッチ 気功(呼吸法)を取り入れた柔軟体操

2.脳トレ体操 認知症予防にもなる指体操

3.有酸素運動 リズムに合わせた軽快な運動

4.筋力運動 負荷をかけて筋肉を鍛える

5.整理体操 体の緊張を緩めクールダウン

 時間が取れない場合は、10分程度、ストレッチを行うだけでもOKです。できれば正しい知識に基づいた気功をお勧めします。

 詳しくは、シャッキリカレッジのホームページもご覧ください。
 基本的な体操プログラムの流れもご紹介しています。

  次回は、五感を刺激する大切さについてお話します。

【第8回】五感を刺激して心身の癒しを

(2015.5.10配信)

 今回のキーワードは、「五感」です。

 人体は、骨と筋肉で構成されていますが、それらを効率よく、また正しく働かせるためには、センサーとなる「五感」が大切です。

 五感は、肉体面だけではなく、精神面も刺激します。心身バランスの良い働きを、正常化するために、五感の役割りは欠かせません。

五感とは・・

  • 目で見る、視覚
  • 耳で聞く、聴覚
  • 舌で味わう、味覚
  • 鼻で嗅ぐ、嗅覚
  • 肌で触れる、触覚

 かたちに表せない感覚ですが、生活全般に関わるあらゆる刺激です。五感が無い世界は無味乾燥なものです。機械的・人工的に作り出されたものではなく、自然界にあるものは五感をバランスよく刺激します。自然のものを上手に活用して、生活の質を高めましょう。

《視覚》笑顔を見ると元気になる
 ミラーリングという言葉をご存知ですか。相手の動きや反応に、無意識に呼応する心理です。人は、好意を感じる相手の真似をついついしてしまう傾向にあると言われています。

 この、ミラーリングを利用して、笑顔を伝搬しましょう。トレーナーが笑顔で体操を指導すると、参加者もだんだんと引き込まれ、笑顔が出てきます。最初はあまり反応が無いかもしれません。でも、諦めずに笑顔を続けてください。

 トレーナーは、姿勢や服装も、見本となるように心がけてください。まっすぐと背筋を伸ばす。トレーニングウェアの着用。明るい照明や整理整頓されたフロアー。
 体操の時間であることを意識づけられるように、見た目も整えるようにしましょう。

《聴覚》明るくはきはきした声、効果的なBGM
 何を言っているのか聞き取れないようなもごもごした声は厳禁です。聴力が衰えてきている高齢者です。ゆっくり、一音一音をはっきりと話すよう心掛けてください。言葉遣いは丁寧に、上から目線的な高飛車な物言いや、逆に、馴れ馴れしいくだけた喋り方は好ま
しくありません。親近感の演出と、馴れ馴れしいのとは違います。トレーナーとして、品位のある言葉づかいをしましょう。

 体操において、音楽の使用は大変効果的です。気分を盛り上げるだけではなく、リズム感を養い、動きにメリハリをつける助けになります。

《味覚》口内環境を整える
 体操中は飲食するわけではないので、味覚は関係ないと思われがちですが、実は唾液を含めて常に人は味覚を感じています。
 すっきりした気分で体操をするために、体操前にウガイをするのも一案です。

 また、傍で見ていただけでは分かりませんが、体操中に胃液が逆流したり、吐き気を催したりすることもあるかもしれません。そうした場合は、スタッフに声をかけるようにお声かけしてください。状態変化について、チェック要素になります。

《嗅覚》匂いの記憶は、認知機能に直結
 忘却のかなたにある記憶が呼び覚まされるとき、一番のきっかけとなるのが匂いの記憶と言われています。懐かしい匂いを嗅いだ時、忘れていた記憶が呼び覚まされたという話をよく聞きます。

 また、アロマの香りなど、癒し効果がある匂いを効果的に利用することで、心身ともにリラックスできます。

 シャッキリ体操では、体操終了後、アロマの香りを嗅いで、リラックスタイムを設けています。

《触覚》肌と肌の触れ合いが一番のコミュニケーション
 人に触れてもらうだけではなく、自分で自分の体の一部を触るということでも効果があります。片方の手のひらで片方の腕を触ってみてください。ひと肌のぬくもりを感じますね?

 シャッキリ体操では、体操終了後、トレーナーが一人一人に、下肢マッサージをしています。その際、至近距離で目と目が合います。「お疲れ様でした。どこか痛みは無いですか」などと声をかけながら、数十秒ですが肌に触れて状態観察をしています。

【第9回】体操後の余韻を楽しむ

(2015.6.10配信)

 体操終了後のクールダウンから、余韻を楽しむ時間の過ごし方をお話します。
 デイサービスでの集団体操は、始まる前から終了後まで、しっかりと利用者の様子を観ることが大切です。小さな状態の変化も見逃さず、次回につなげるヒントも見出しましょう。

 また、体操後は気分が高揚しています。心身ともにゆっくりと平静な状態に戻して行きます。

★クールダウン
 体操をしたあとは、体の緊張を緩めクールダウンします。

「お疲れ様でした。最後は、ゆっくりと体を伸ばし、リラックスしましょう。軽く足を開きます。体をまっすぐにして、大きく息を吸ったり吐いたりしながら、体の隅々をほぐします。」

○腕の上げ下げ

○首を回す

○肩の上げ下げ

○肩の回旋

○背中を伸ばす

○腰をひねる

○足をぶらぶら揺らす

○足をさする、マッサージ

○腕の上げ下げ

女優気分で、ハイ、ポーズ!

★決めポーズ
体操の終わりは、決めポーズで締めくくりましょう。
 ストレッチは、指先まで意識して美しく伸ばすイメージで。呼吸も大切です。
 ゆっくりと体を動かし、大きく息を吸います。最後は、綺麗に、笑顔で、決めポーズ!

 十分に、身体と心がほぐれていれば、決めポーズも恥ずかしがらずに自然とできるようになります。自然体で、自然の笑顔が出ていれば、身体と心がほぐれていると分かります。
 ここへきてまだ固い態度、固い表情であれば、次回以降、焦らずに少しずつほぐれるように留意してください。

★楽しい時間を共有
 同じ時間を共有すると、共通の話題ができ親密度が増します。BGMで使った音楽のアーティストや、使用したアロマの名前や効能など、お茶を飲みながら話題を提供すると良いでしょう。

★心地よい疲れのあとは静養タイム
 ほんのり汗ばむくらいの疲れは、リフレッシュになります。ただし、きちんと体を休ませないと疲れとして残ってしまいますので、静養タイムも大切です。

 ヒーリングミュージック、ハーブティーなど、癒し空間を演出しましょう。トレーナーは、いつもの元気な大声ではなく、ささやくような声で個別に対応すると良いでしょう。

【最終回】トレーナーはエンターテイナーたれ!

(2015.7.10配信)

 この連載で、選ばれる事業所になるために、集団体操を充実させることをご提案してきました。

 集団体操は、事業所のファンを増やします。体操に参加することを楽しみに、自費でも通いたいという人が出てくることもあります。

 事業所のファンを作るには、トレーナー自身が魅力的であることが一番ですが、カリスマになれと言っているわけではありません。

 事業所の方針として、どのような姿勢でトレーナー役を演じるかを明確にしておくことが大切です。そして、トレーナー1人ではなく、スタッフ全員が共演者であることを認識しましょう。できれば複数のスタッフが交代でトレーナー役をできるようになることが理想です。

 トレーナーはエンターテイナーとして、明るい笑顔で場を盛り上げることからが役割りです。場を盛り上げると言っても、ただ面白おかしくすればよいということではありません。その点は誤解しないようにお願いします。

 目的は、参加者の「意欲を高める」ことです。いやいややらされるのではなく、率先して参加する気持ちにさせるための演出です。

 トレーナーはエンターテイナーたれというと、時々勘違いして「自分が楽しんでいる」人がいます。もちろん、自分自身も楽しくかかわることは悪いことではありません。ですが、「参加者が主役」ですから、独りよがりのやり方に酔ってはいけません

 エンターテイナーは常に冷静に、「観察する目」を持たなくてはいけません。体操の指導は、動きを憶えさえすればすぐにできるようになります。ですが、有能なトレーナーになるには、地道な努力が必要です。身体機能に関する専門知識も身に付けていきましょう。

 皆様のご活躍を心から期待しています。エールを送ります。

2016年6月19日開講のご案内

Lee Setsuko

介護予防と機能維持のシャッキリ体操 Lee セツコ

株式会社シャッキリカレッジ 代表取締役
健康運動指導士
デイサービス エーゼット長原 共同経営者・生活相談員
NPO法人 ジャパン ユニバーサル・スポーツネットワーク 理事長

 高齢者が安全に楽しく行えるシャッキリ体操を考案。
「集団体操は、運動を指導するだけでは不十分。トレーナー自らエンターテイナーとして意欲を高める声掛けをすることが必要」とトレーナー養成に力を入れる。