地域に愛される介護事業所とは

 地域から孤立した事業所は、利用者にとって魅力ある事業所にはなり得ません。地域に溶け込み、愛される事業所を目指して、何をしたらよいかを一緒に考えましょう。

【第1回】地域とは?

(2015.9.10配信)

 介護事業所を運営するにあたり、事業主も職員も、地域の皆さんに親しんでいただき、足を運んでもらって、賑わいのある事業所にしたいと思っていることでしょう。

 地域の中で孤立して、施設や事業所内だけで仲良くやれれば良いとしたならば、高齢者本人が地域で暮らすことから隔絶されてしまいます。

 厚生労働省は、「高齢者が、介護が必要になっても、住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるよう、質の高い保健医療・福祉サービスの確保、将来にわたって安定した介護保険制度の確立などに取り組んでいます。」と掲げています。
(厚労省HP介護・高齢者福祉のページ)

 介護保険制度の目的として「地域」での暮らしが位置付けられているのです。

 そしてさらに、デイサービスは地域の核として注目されます。平成27年度法改正で、デイサービスは地域連携の拠点として位置付けられました。そして、生活相談員はその窓口として期待されています。

 さて、地域連携といわれても・・何をしましょう。

 今までもご近所さんとは仲良くやっているし、地域の行事にも積極的に参加している。他に何かできることはあるだろうか。と、お悩みの方も多いと思います。

 そこで、まずは「地域」とは何か、改めて考えてみることにしましょう。

 「地域」という言葉は使われる場面によって変わってきます。言葉の意味として説明するならば、「ある目的や特質で区画された範囲」となります。つまり、目的や特質ごとに、いろいろな地域」の分け方があるということです。
 
 行政がいうところの地域は、「所管」すなわち「行政域」です。地区町村などの自治体であったり、その中でさらにエリアが分割されていたり、あるいは学校区域ごとに地域が定められていたりです。

 お天気予報では地形を中心に地域が定められます。観測所は似たような気候条件の範囲内に設けられます。

 また通信や流通は、交通網などで地域を分割します。宅配便の料金表などを見るとお分かりかと思います。

 政治経済的には、国際的に国とは認められていない独立した範囲を「地域」と呼ぶことがありますね。台湾や香港などを含めて、ニュースで国や地域という呼び方をしていることに気がつくでしょう。

 介護保険制度では、行政区域で情報が管理されます。しかしながら、行政が管理上定めている地域は、必ずしもそこに住む人々にとって馴染みのある地域であるとは限りません。町や村の境にお住まいで実際には隣町のほうが生活圏になっている場合もあります。

 利用者にとっての「地域」を知ることは、利用者満足につながります。地域に愛される事業所をめざし、知恵やアイデアを出し合いましょう。

行政区画
県や自治体などの管轄区域。便宜的、政治的に定められているため、実際の生活圏とは異なる場合がある。

地形風土
山や川などで遮られた昔のムラの範囲が、現代でも人々の暮らしに生きている場合がある。

生活圏(経済・機能)
駅や商店、生活に密接した施設(図書館や病院)など、日常生活に便利な範囲。行政区画よりも、その人にとって「地元」感がある地域。

 介護では、単に場所の範囲というだけではなく、そこに住む人たちや営みを含めての「地域」をとらえることをお勧めいたします。つまり、エリアだけではなくソフトも含めてということです。

【第2回】利用者にとっての地域とは

(2015.10.10配信)

 デイサービスのパンフレットなどを見ると、「送迎範囲」としておおよそのエリアが記載されていることが多いです。行政区域を超えた送迎可能な距離を提示していると思われます。
 
 この、送迎範囲はどのように設定していますか。

 一般的に「商圏」設定は、事業所からの距離が基準になります。都市部では半径2~3キロの地域もあります。郊外では10キロ、もっと広く20~30キロを設定する場合もあります。
 自動車で片道15分から遠くても30分以内が目安です。デイサービスでは送迎が必須なため、送迎に要する時間は事業所運営ではシビアなテーマになります。

 事業所からの距離で測った円は、必ずしも正円ではありません。踏切や河川の端、地域を分断する高速道路など、距離が近くても時間がかかる場合があるからです。そうした道路事情を鑑みて、いわゆる商圏というものが決まります。ここまでは、FC本部やコンサルタントの指導も同様です。

 ただし、送迎に便利という事業者目線で利用者を募ることは、利用者の地域での暮らしを無視したやり方と言わざるをいません。利用者のとっての地域とは何か、良く考えてみましょう。

 事業所からはかなり離れたところにお住いの方でも、生活圏が事業所エリアであることもあります。
 逆に、近くにお住まいでも、日常生活圏は異なる場合があります。商店街や郵便局や図書館などの施設が、その方のご自宅からどういう方向に、またどのくらいの距離にあるかなどを把握することをお勧めいたします。

○ 半径○kmなど、距離を測る
○ 地域分断(道路・河川・鉄道)
○ 送迎至便な範囲は事業者都合
○ 向こう三軒両隣の顔なじみの範囲は安心域
○ 商店街、郵便局、図書館、町役場、駅や停車場
○ 中学校域、小学校域、幼稚園、保育園

 介護保険法では、「住み慣れた地域で・・日常生活を営む」ことと明記されています。
 その人にとってほっとする見慣れた風景や生活音がどういうものであるか、地域のことを良く知るところから始めましょう。

《介護保険法に明記された介護事業の目的》
第1章1条
尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う・・・

第1章5条
可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう・・

厚生労働省のHP、高齢者福祉のページには、
高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指して
と、掲げられています。

【第3回】デイサービスの役割

(2015.11.10配信)

 国はスケールメリットから大型化を図る様相を呈しています。小規模介護事業所は、その魅力や存在価値を自らアピールしていかなくてはいけません。

 小規模には小規模の魅力があるのです。

 ところで、通所介護事業所は法的にはどう位置付けられているのか、正しく理解していますか。

 老人福祉法と介護保険法の抜粋は、下記の通りです。

<老人福祉法 第1章 第5条2より抜粋>
『入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、介護方法の指導その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業』

介護保険法の「第7章・通所介護」第1節・基本方針(第29条より)抜粋
『利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことが出来るよう、必要な日常生活の世話および機能訓練を行うことにより『利用者の社会的孤立感の解消』および心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的および精神的負担の軽減を図るものでなければならない。』

 すなわち介護保険制度としては、おもに下記の役割が明示されています。

○ 生活支援(入浴・排せつ・食事など)
○ 自立支援(機能訓練、理学療法・作業療法など)
○ 孤立解消(孤独感解消、見守りなど)
○ 家族支援(レスパイトケア)

 上記の中に明記されていませんが、求められている役割としては以下のようなこともあります。

○ 雇用の創出(地元の人の採用)
○ 地域連携の拠点(防犯、防災、多世代交流)
○ 地域文化・生活文化の継承
○ 地域資源の活用(地域の賑わい創出)

 ここでいう、地域資源とは、地域にあるおもな施設や事業所などです。公共施設や営利施設に関わらず、地域住民のための大切な資源です。

○ 学校・幼稚園・保育園
○ 自治体の福祉施設・文化施設
○ 警察・交番・消防署
○ 医療機関・健康増進施設
○ 商店街・コンビニ

 もちろん、介護サービス事業所も含まれます。

 こうした資源を有効に活用することによって、地域の安心・安全がはかられ、賑わいが生まれます。デイサービスは地域活性に一役買うことになります。

 とても価値の高い地域資源の一つです!

【第4回】地域文化・生活文化を守る

(2015.12.10配信)

 デイサービスでは、季節や歳時記に合わせてレクリエーションを行ったり、手工芸で飾りを作ったりします。ただのお遊びや楽しみだけではありません。デイサービスならではの役割りがあるのです。

 季節感を強調して時の移り変わりを意識させることは、認知機能の低下を予防する効果があります。また、手作業も老化防止に役立ちます。利用者の機能訓練が、しっかりと行われているのです。そして、地域文化が丁寧に継承されています。若い職員たちが、先輩職員から地元のことを深く教えてもらう機会になっています。学校や家庭で希薄になった土着の文化が、デイサービスで細々と受つがれています。

 季節行事だけではなく、日々の生活の中にも文化が息づいています。食事の提供では、郷土料理が並び、味付け一つとっても地域性が表れます。気候に合わせた暮らし方も地域ならではの知恵や工夫があるものです。高齢者の居心地の良さを考えた時に、昔ながらの地域ならではの文化や暮らし方が取り入れられることは当然のことです。利用者のニーズを考えるならば、地域の生活文化を知り、それを再現することが望まれます。

○商業地域、住宅街、文教地区
 同じ町でも、エリアによって特性が異なります。

○住民特性や地域文化
 エリア特性によって住民の気質も変わり、価値観や地域文化も違います。

○方言・季節行事など
 方言は、母なる言葉です。その人にとって耳慣れた音は、懐かしさと安心感を覚えます。季節行事も子供の事に楽しんだ記憶などを思い出すきっかけになります。

 お祭りや避難訓練など、地域のイベントには積極的に参加しましょう。地域交流のきっかけになり、いざという時の助けになります。

○地元の人と知り合う
 人が集まる賑わいのある場所では、誰もが開放的になり知らない人同士でも気軽に声を掛け合える雰囲気になります。
 道ですれ違ってもいきなり挨拶がしにくくても、地域の集まりであれば親近感がわき知り合うきっかけになります。

○地域文化を知る
 普段はあまり知ることがないディープな面を見ることができます。日常生活では習慣から消えても、行事の時には昔ながらのやり方になることが多いです。

○利用者の社会参加
 利用者にとっても、社会参加の一歩になります。ただ黙っているだけでも、音に聞こえ、肌に感じる人との触れ合いが、利用者にも必ず良い影響を与えます。

○事業所を知ってもらう
 積極的な宣伝活動をしなくても、「ああ、あそこにあるデイサービスね」と認識していただけるチャンスになります。
 日頃の感謝の言葉を伝えるだけで、その後のつながりが変わります。
 「いつも有難うございます。地元の皆さんにはお世話になっています」と、きちんと伝えることが大事です。

【第5回】地域に愛される事業所になる

(2016.1.10配信)

 介護事業所には、身体介護や生活援助、機能訓練等のほかに、「高齢者の社会参加を進める」という役割があります。社会参加と一口に言っても、具体的な活動内容は明言されていません。

 デイサービスなどに来所して他の利用者と交流を図るのも社会参加と言えなくもないですし、就労や地域活動など生産性のある行為をさすこともあります。

 要介護者としては、「地域の人と交流を図る」ということでしょうか。「孤立感の解消」をもう少し積極的に図る程度でよいのかと考えられます。

 さて、利用者と地域の人たちとの交流を図るためには、まず事業所が地域に認知され親しみを持っていただく必要があります。
 用事のある時だけお願いします、といっても、誰も受け入れてはくれないでしょう。日頃のお付き合いが大事です。
 地域とのお付き合いは、ギブアンドテイクです。町内会の会合や活動には、なるべく参加して協力する姿勢を見せましょう。職員の勤務時間に含むかどうかは、事業所内でしっかり話し合いが必要ですが、それほど時間をかけずにすむこともあるはずです。玄関先
を掃除する時に、ちょっと表の通りも掃いておくなど、数分程度でできることからやってみることをお勧めします。

 まずは、一番身近なご近所さんと気持ちよく挨拶ができる関係になることからです。
 食材や消耗品も、通販が便利で安いかもしれませんが、できるだけ地元の商店を利用することをお勧めします。お店とお客さんの関係で、ちょっとした会話が生まれ、事業所を知って機会になります。お店にチラシを置いてもらったり、ポスターを掲示してもらったりということもお願いできるようになると良いですね。

 消防訓練とか、避難訓練など、地域で行われる訓練に便乗するのも一案です。避難所の場所も確認できますし、地域の方に要介護者の存在を知っておいていただけるのは安心です。
 その他、お祭りや運動会など、利用者と一緒に参加できることは、無理のない範囲で計画に入れると良いでしょう。
 イベントを企画する側からしたら、参加してくれるのはとても嬉しいことです。職員だけがあくせくと義務のように関わるのではなく、利用者と一緒に地域に溶け込むつもりで参加してみてください。

 利用者の社会参加推進が、愛される事業所になることにつながります。

 地域ぐるみの介護が定着していけば、事業所だけではなく地域全体に賑わいが生まれます。
地域に愛される事業所をめざして、まずは挨拶からです。送迎時には傍らを通る人にも、

「(車を停車して)ご迷惑をおかけします」

「(避けていただいて)有難うございます」

・・と声を掛けましょう。
 知っている人だけではなく、通りがかりの人にもです。すでに実
行している人もいらっしゃると思いますが、ぜひよろしくお願いします。

 全国のデイサービスが、それぞれの地域で愛されていけば、デイサービスの価値や魅力が一層高まります。一緒にデイサービスの価値と魅力を向上していきましょう!

3beans.jp

八久保宜美

株式会社スリービーンズ 代表取締役 
東京都中高年勤労者福祉推進員
一般社団法人日本元気シニア総研 元気シニアビジネスアドバイザー
日本生涯現役推進協議会 参与

 孤軍奮闘で頑張っている生活相談員を応援するため当サイトを運営。特に小規模の事業所は、少数精鋭の骨太運営が必須。そのためには顔であり柱である生活相談員の活躍が欠かせません。
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